私刑

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私刑(しけい)とは、国家ないし公権力と刑罰権に基づくことなく、個人または特定集団により執行される私的な制裁リンチとも称される。客観的には「集団暴行」などであるが、加害者側の処罰意図を意識した表現である。

概要[編集]

私刑は、熱狂ヒステリー状態下にあるものを含め、観衆・集団のある程度の支持のもとなされる場合がある。民族紛争の際に民兵集団により行われる非戦闘員への残虐行為も私刑といえる。

中世以前のヨーロッパでは、フェーデアハトのような私刑原理があり、合法であった。しかし1400年代になり公権力による刑罰権の回収が行われると私刑は違法になった。ドイツでは1495年マクシミリアン1世による「ラント平和令」の制定によって一切の私刑が禁止された。

アメリカ合衆国西部開拓時代フロンティアの地などでの犯罪者に対し、法の裁きを経ず民衆による私的制裁が加えられており、この行為を、アメリカ独立戦争時、暴力的行為を働くことで知られた チャールズ・リンチEnglish版大佐、ウィリアム・リンチEnglish版判事に因み、「リンチ」と呼称するようになった。

南北戦争以前において、私刑は治安や秩序維持のために行われるものとされ、素行の悪い奴隷や共同体の規範を逸脱するものに対し、民衆の自警組織によって行われるものであった。その後、白人至上主義KKK団が結成され、アフリカ系アメリカ人を対象に私刑を率先して行う役割を持ち、リンチの持つ意味が秩序統制から異人種憎悪の表現へと変化していった。

法的解釈[編集]

  • 明確に法律に依らない私刑は多くの国で禁止されている。日本国憲法においては

何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない。

日本国憲法第31条

とされている。

  • 紛争地域や無政府状態の地域では21世紀になっても決して珍しいものではなく、殺人の現行犯や単なる泥棒、或いは民族紛争時の戦争犯罪人などと認定された者が民衆に袋叩きにされ、最終的には恐らく被疑者の殺害に至っている映像や写真が数多く出回っており、英語圏ではこうした私刑をMob Justice(暴徒による正義)と呼称している。

インターネットにおける私刑[編集]

ネットいじめ も参照 インターネット上では、悪事を犯したと目される人物を正義感をもって衝動的に私刑しようとする行為(ネット自警団)が見られる。インターネットが普及した1990年代以降、主に2ちゃんねるなどの電子掲示板TwitterなどのSNS・特定のホームページ上において|title=年代、主に、といっているのは誰か不明}}、特定の個人を名指しして個人情報(当該人の電話番号や住所・実名・本人の写真・家族構成など)を晒し出したり、名指しで批判や暴言を投稿している場合がある。対象はいじめの相手・掲示板やSNSで炎上した一般人・犯罪を犯した容疑者・暴言や失言及び不祥事を起こした芸能人を含む著名人など多岐にわたる。要出典。{また、少年法によって成人より刑が軽減されたり少年院送致など短期間で社会復帰が可能な可能性があるため、それらに不満を持つ民間の一般人が個人情報などを漏洩することが多い}}。犯罪被疑者の個人情報の流出行為については「このような犯罪を行っており(流出は)やむを得ない」「再発予防と抑止力につながる」といった賛成の声が多く上がっている一方、「ただの集団リンチじゃないのか?」「刑が確定するまで、犯罪者ではない(推定無罪)」「世論を代表する制裁者を気取っている」といった疑問の声も上がっている。要出典

メディア・リンチ[編集]

犯罪事件などを中心に、主として、ワイドショー週刊誌ニュースショー、パパラッチなどによって、庶民感情の犯罪への憎悪や覗き見趣味を煽る形で事件にまつわる被害者加害者を問わず、人間関係やプライバシーなどがマスメディアによって当事者の意向が無視された状態で一方的に流されてしまうことでプライバシーの侵害や名誉毀損が行われている状況の総称。 メディアスクラム も参照

日本のマスメディアの犯罪報道は、無罪推定すべき被疑者被告人を犯人視して報道することが多い。日本では、確実な証拠が無いと逮捕しないこと、起訴便宜主義によって有罪に持ち込めると確信できる事件しか起訴しないことなど、捜査機関の判断と裁判所の判断の近接が生じていることが大きいと考えられる。これは日本国外でも同様である。

また、被疑者・被告人のプライバシーを暴き立てることによって視聴者・読者の関心が高まりやすいこと、記者クラブ制度によってマスメディアが捜査機関の一部のように振舞っていること、警察、検察の取調べなどの際に被告人弁護士などの第三者がつかないため、警察発表が一方的に報道される傾向が強いことなども大きいと考えられる。松本サリン事件などはその顕著な例である。本論については人権屋も参照。

犯罪被害者に対する報道[編集]

犯罪被害者に対しては、世間一般的にはマスメディアは同情的に流すものと意識されているが必ずしもそうではない。被害者やその親族・関係者が事件にまつわる取材を忌避する傾向や事件に関する報道を流すことを望まないケースが間々見られるにもかかわらず、マスメディアが当事者の意向を無視して、プライバシーを暴露したり、人間関係や事件に関連するトラブルを一方的に報道することもしばしば見られる。

その他のケースとしてのメディア・リンチ[編集]

著名人、タレント、芸能人やそれにまつわる事件のほか、大規模災害の被災者などへの取材活動に関して、視聴率や発行部数の向上など、マスコミが自身の利益に繋がる期待通りの取材成果や映像が得られない場合、彼らに対して横暴な態度を取ることが見られ、これが一種のメディア・リンチではないかとの指摘がある。特に後者の場合には、取材側が大規模災害を一種の「祭り」として楽しんでいる感覚があり、それにまつわる刺激的な演出を求めているために行われる傾向が見られるために、一方的に行われるのではないかとの指摘である。たとえば、報道番組での発言などについてそうした傾向があるとのものである。

現在ではブログSNS内で同様に不道徳な行為を行ったことを告白する人物や、企業等の不祥事、思想的に異なる見解、単なる趣味嗜好の違いに対してまでも、インターネット掲示板で呼びかけて同様のことを行っており、俗に「炎上」と言われている。

主なリンチ事件[編集]

日本[編集]

日本国外[編集]

フィクションによる私刑[編集]

脚注[編集]

  1. 一部の週刊誌は自粛要請を押し切る形で少年の実名報道を行う場合がある。

関連項目[編集]