学位

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学位がくい、Degree)とは、大学や国家の学術評価機関等において研究者や一定の教育課程の修了者に対して学術上の能力または研究業績に基づき授与される階級別の栄誉称号を言う。

概要[編集]

学位は、14世紀のヨーロッパの大学における教授職の資格を起源としており、学術業績に対しての栄誉称号として発展し、現在は高等教育を行う機関(大学など)が授与する学術上の位となっている。

現在の日本の法令に基づく学位には、「博士の学位」「修士の学位」「専門職学位の学位」「学士の学位」「短期大学士の学位」の5種がある。また、学位に準じるものとして、高等専門学校の卒業生に付与される準学士の称号や、条件を満たす専修学校の専門課程(いわゆる専門学校)を修了した人に付与される高度専門士及び専門士(準学士に準ずる)などがある。学位と混同されやすいものとして、研究業績をあげた者や大学に特別な貢献をした者に、各大学が独自に授与する名誉博士の称号などもあるが、これは学位ではない。

元々、日本の学位は、学術上の栄誉称号として発展を遂げ、文部大臣博士会の推薦を経て授与するものであった。現在の学位は、大学または学位授与機構が授与し、世界的にも法的にも認められているものである。様々な種類があるが、学位が大衆化した今日では、単に「学位」といえば一般的には「博士の学位」を指す。

日本における学位制度[編集]

学位の概念[編集]

学位は、単位修得や研究論文などの研究を踏まえた学修の成果に対して授与される、世界的に通用する法的に認められた学術称号である。学位、とりわけ「学士の学位」は、国家資格か大学の認定する公的資格の様に誤解される場合もあるが、学位は資格ではないと考えられている。第二次世界大戦降伏前において、学位は、文部大臣が授与する称号であり、いわゆる栄典ではないものの、階級位階勲等功級爵位などと並んで称された非常に栄誉ある称号であった。

学位と論文提出[編集]

学位は、世界的にも認められた学術上の称号であるから、学術的業績すなわち論文執筆が要求されるのが原則であった。博士の学位は、現在でももっぱら学位請求論文の提出、及び審査合格により授与される。しかし近年、学士の学位を授与される際において、卒業論文は必須ではなくなってきている(各大学・各学部、各研究室ゼミナールの形態等にもよる)。専門職学位も同様である(論文提出を課す専門職大学院もある)。

学位の種類[編集]

現在の日本の法令に基づく学位には、短期大学士の学位、学士の学位、修士の学位、博士の学位、専門職学位があり、学校教育法などに定められている。日本の法令に基づく学位は、各大学大学院及び短期大学を含む)、独立行政法人大学評価・学位授与機構によって授与される。法令上ではともかく、日本で学位といえば、おおむね「博士の学位」のことを指す場合が多い。また、日本で代表的かつ授与数の多い博士の学位は、医学分野や工学分野における「博士の学位」などで理系において積極的に博士の学位が授与されている。

アメリカ合衆国ロースクールにならって日本全国の大学に設置認可された法科大学院のすべてにおいては一律、「法務博士(専門職)」(アメリカのジュリス・ドクターに相当)の学位が授与される。その他の分野においても各大学により多彩な専門職学位が授与される(#日本における学位制度専門職学位も参照)。


また、学位の他、日本で付与されている称号には、「準学士の称号」「専門士の称号」「名誉博士の称号」などがある。準学士の称号は、高等専門学校を卒業した者に学校教育法に基づいて付与される。また、専門士の称号は、一定要件を満たす専修学校専門課程専門学校)を卒業した者に文部科学省告示に基づいて付与されることとなっている。名誉博士については、教育機関が著名な研究を行った者などに独自に与えることが日本でも増えてきている。

学位の表記[編集]

学位における専攻分野の表し方については、文部科学省令の大学設置基準および学位規則で、平成3年以前において、専攻分野が明示された「○学士」「○学修士」「○学博士」というものが授与されていたが、現在は、「学士(専攻分野)」「修士(専攻分野)」「博士(専攻分野)」という専攻分野を付記する形で授与されている。また、専門職大学院を修了した者に与えられる学位は、専門職学位とされ、文部科学省令により法科大学院の修了者には「法務博士(専門職)」が、法科大学院以外の専門職大学院の修了者には「○修士(専門職)」を授与することになっている。

また、学位規則においては、学位を表記する時に授与した大学又は大学評価・学位授与機構の名称を付記することになっている。

学位の例
  • 学士(経営学)(拓殖大学)
  • 学士(文学)(大学評価・学位授与機構)
  • 修士(情報管理学)(朝日大学)
  • 博士(法学)(名古屋大学)
  • 法務博士(専門職)(日本大学)
  • 公共経営修士(専門職)(早稲田大学)

学位や称号の授与[編集]

学位は、大学又は大学評価・学位授与機構の学位記授与式(学位授与式)にて学位記の交付を以って授与される。 早稲田大学などのように学帽と呼ばれる房のついたキャップ式服と呼ばれるガウン学位章というフードの授与もなされる大学もある。大阪大学桜美林大学大阪学院大学桃山学院大学などのように学位記授与式や卒業式の間だけ式服や学位章を貸与する大学もある。

学位と称号の違い[編集]

学位について定めた法令として、現代の日本には、学校教育法や学位規則がある。特に学校教育法に学位として規定されていないものは、「学位」ではなく「称号」である。したがって、準学士の称号や専門士の称号などは、称号であって学位でない。なお、1991年(平成3年)以前は、「学士の学位」ではなく「学士の称号」が付与されていたが、現在では、学校教育法の規定により、従前の学士の称号を授与された者は、学士の学位を授与された者とみなすことになっている。また、2005年(平成17年)の学校教育法の改正前に短期大学が付与していた「準学士の称号」(高等専門学校が付与した準学士の称号を除く)は、「短期大学士の学位」とみなすことになっている。学位は世界的通用性を保証するものだが、称号はあくまで日本国内でのみ通用するものとされている。

博士の学位をめぐる近年の日本の動向[編集]

日本の高等教育においては、新たに博士の学位を授与された者の就職が非常に特殊かつ狭き門となっており、博士の学位を有する者の専門性・能力を活かす場が、日本以外の国に比べて遅れているという指摘がしばしばなされる。いわゆる職に就けない博士をオーバードクター(余剰博士)という。こうした事態に備え、文部科学省では博士の学位を授与された後の一時的な任用を推進するポストドクター対策に乗り出している。

日本の学位[編集]

日本の学位には、学校教育法で定められているものとして「学士」「修士」「博士」「短期大学士」の学位が、学校教育法に規定があるが学位規則で名称が定められているものとして「専門職学位」がある。短期大学卒業者に対して授与される「短期大学士」の学位を付加する学校教育法改正案が国会に上程され、可決成立した。2つ以上の学位取得をダブルディグリーというが、特に修士号を2つ取得することをダブルマスターという。

日本の教育課程と学位・称号の相関関係[編集]

日本の学校教育における教育課程は、高等学校卒業後は4年制の大学、高度専門学校及び2年制または3年制の短期大学、専修学校がある。また、中学校卒業から高等専門学校に進んだ者は通常の短期大学卒業と同程度の学歴を得ることになる。それぞれ、卒業後においては、4年制の大学及び高度専門士付与校たる専修学校を卒業した者はそれぞれ学士の学位及び高度専門士の称号を授与される。さらに、2年制または3年制の短期大学、高等専門学校、専修学校ではそれぞれ短期大学士の学位、高等専門学校では準学士の称号、専門士の称号を授与される。

学位と称号とでは、国際通用性の有無などの違いこそあるが、教育課程としての程度は同じであると判断され、その後の進路においても短期大学士・準学士・専門士はともに4年制大学の学部3年生に編入学することができる。さらに、学部及び高度専門士付与校たる専修学校を卒業した者は、大学院修士課程及び専門職学位課程への入学資格を認められる。また、2年制及び3年制の大学院修士課程(博士前期課程)と専門職学位課程(法科大学院及びその他の専門職大学院)は教育機関としての趣旨や認定する能力にこそ違いはあるが、ともに大学院博士課程(博士後期課程)への入学資格を認定される。

  教育課程 授与される学位及び称号

  • 大学院博士課程(博士後期課程)              ★博士
  • 大学院修士課程(博士前期課程)・専門職学位課程      ★修士・★専門職学位
  • 4年制大学学部・4年制専門学校専門課程          ★学士・●高度専門士
  • 短期大学学科・高等専門学校・2年制専修学校専門課程    ★短期大学士・●準学士・●専門士

※★は学位、●は称号。


大博士の学位[編集]

大博士については、明治20年の学位令で、大博士の学位が置かれ、文部大臣が授与することとなっていたが、授与例は1例も無いまま廃止された。

博士の学位[編集]

博士の学位とは、ドクターのこと。博士の学位は大学院博士後期課程(博士課程)修了者に対しては当該修了した大学や防衛大学校や防衛医科大学校の研究科の修了者に対しては独立行政法人大学評価・学位授与機構から、それと同等の能力を持つ者に対しては大学や独立行政法人大学評価・学位授与機構から授与される学位である。博士後期課程(博士課程)を修了するには、大学に学位論文を提出し、審査に合格しなければならない。通常は博士号の取得を志した場合、博士論文提出までに学会での発表を行い、博士課程在籍中に2本から3本の査読付き投稿論文を執筆するといった業績が求められるのが、日本における一般的な博士の学位審査を受ける要件となっている。ただし、大学によっては査読論文を条件としないところがあったり、教授の退官時にその研究室所属の博士課程の院生に学位を乱発することも慣例化している。つまり、博士号といえどもその質と信頼性にはかなりの差があることは否定できない。

博士課程にて学位を取得した場合は「修了」として認定されるが、就職などのために学位を習得する前に中途退学するケースも多い。人文社会系の大学院では、所定の在学期間(3年間)以上在学し、修了に必要な単位を全て取得してはいるものの、学位論文だけが完成しないまま就職することも多く、こうした場合「満期退学(単位取得退学)」と言う。在学年数を越えて大学院に留まる場合は研究生として在籍するケースもある。また、2005年の文部科学省中央教育審議会において文部科学大臣への答申の中で博士課程に社会人コースを設置し、社会経験にて実績のある人物の場合は1年間の在籍期間中に学位取得を志すことができるようにすべきだとされた。つまり、大学院の博士課程に社会人コースが設置された場合、1年間の修学期間で博士号を取得することが可能となる。

上記のような博士課程を修了によって取得する博士号の他に、博士課程を持つ大学に学位論文を提出することによって博士号を取得することもできる。このように2通りの博士号があるため、課程修了による博士号を「課程博士」、論文提出のみによる博士号を「論文博士」と呼び分ける。博士号は授与大学ごとに通し番号が付けられるが、課程博士には甲1234XX号のように「甲」が、論文博士には乙1234XX号のように「乙」が付けられる。

授業料を払い一定期間在学しなければ取得できない課程博士に対し、就職して収入を得ながらでも論文提出だけで取得できる論文博士の存在は公平性を欠くこともあり、最近は論文博士制度を廃止しようとする動きがあるが、上述の「満期退学(単位取得退学)」者が博士号を取得できないままとなるような制度になってしまう可能もあり、議論が続けられている。

また、わが国では、博士論文は国立国会図書館への寄贈が求められる(納本の対象ではなく義務ではない)他、取得後一定期間内に公刊することが義務づけられている。国立国会図書館と国立情報学研究所が作成している「博士論文書誌データベース」で国内の大学で授与されている博士論文の検索ができる。

人文科学法学などの専攻分野において博士の学位は、以前は大学の教員が生涯の研究の集大成として取得するものであったので、取ろうと思ってもなかなか取らせてもらえず、大学の教員といえども博士の学位を持っていない人が多かった(分野によっては今でもそうである)。学位取得を志しても、勤務先の上司である教授が学位を持っておらず、部下が学位を取得することを表に裏に妨害するといった悪弊も存在した。こうした悪しき慣習は、課程博士として30歳前後の博士が助手や専任講師として大学に就職することが一般化するにつれ、徐々に消えつつある。近年は、博士号は研究者の目標ではなくスタートラインだと考えられるようになり、平成3年の学位規則改正後は若いうちから博士号を取る方向に大学院の指導も変化してきている。今後は文系学部にあっても、助教授以上に昇格するには、学位(分野によってはそれに匹敵する顕著な業績)が要求される傾向が強まることが予想される。

英語の表記では、Ph.D(羅:Philosophiae Doctor 哲学博士)と表記するが、哲学に限定されることなくすべての学問分野の博士号に対して用いられる。敬称として、通常のMr.Mrs.MissMs.の代わりにDr.DR.が使われることがあるが、「doctor」は日常的には医者を意味することが多く、医師は混同を避けるためMDと記載することが多い。博士が自身で学位所持を表記する際は、氏名の後にPh.Dと書くことが一般的である。医師であり、かつ医学博士を所持する者は、氏名の後にMDとPh.Dを併記することが一般的である。

修士の学位[編集]

修士の学位とは、マスターのこと。修士の学位は、最高位の博士に準じ、学士の上位にある。大学院の修士課程(博士前期課程)を修了した者に授与され、それと同等の能力を持つ者に対しては独立行政法人大学評価・学位授与機構から授与される。日本では昭和28年の学位規則制定後に現れた新しい学位である。

専門職学位[編集]

専門職学位は、専門職大学院を修了した者に授与される学位。

「法務博士(専門職)」は法科大学院の修了者に、「○○修士(専門職)」はそれ以外の専門職大学院を修了した者に授与される。

法科大学院の場合は標準修業年限が3年で、法学部卒などの法学既習者は2年で修了することも可能である。その他の専門職大学院では標準修業年限が2年となっている。高度専門職業人育成の観点から修了に際して学位論文は必須ではなく、院生に課さない大学院も多い。但し、その代わりとしてリサーチペーパーの提出やその後において大学院の修士課程ないしは博士課程進学希望者については、入学審査に学位論文の提出を求められるケースもあることから、希望者は論文指導を受け学位論文を提出するという選択肢を置いている場合が多い。また、中には学位論文を提出を義務付ける大学院も一部にはある。

なお、専門職学位は博士、修士とも異なる第3の学位である。よって、表記上、博士、修士という学位名称であっても、基本的に研究上の学位とは区別されるものである。但し、教育課程としては、修士課程(博士前期課程)と同等と看做される。

なお、専門職学位に相当する制度としてアメリカ合衆国の職業学位がある。アメリカの職業学位は、法曹養成のロー・スクールが授与するJ.D.、医師養成のメディカル・スクールが授与するM.D.、聖職者養成の大学院が授与するTh.D.M.Div.などがある。

学士の学位[編集]

学士の学位は、大学の学部における所定の課程を修め所要単位を取得して卒業を認められた者、大学校を卒業して独立行政法人大学評価・学位授与機構大学評価学位授与機構の学位審査を合格した者、その他大学評価学位授与機構に学位を申請し審査を合格した者に授与される学位。学士の学位は大学卒業者に対しては当該大学から、それと同等の能力を持つ者に対しては大学評価・学位授与機構から授与される。諸外国ではバチェラー(文系ならB.A.―Bachelor of Arts- 理系ならB.S.-Bachelor of Science-)と言うが、日本ではこの呼称は一般的ではない。

学位令発布当時は学位授与権が文部大臣にあったため、帝国大学などが授与する学士号は当初、称号とされた。平成3年(1991年)以降、学位に編入された。

独立行政法人大学評価・学位授与機構は、防衛大学校防衛医科大学校海上保安大学校など学校教育法による大学以外でかつ他の法律に規定がある教育施設(大学校など)を卒業した者に学位を授与する。また、短期大学や高等専門学校を卒業し、一定の学習を行い大学卒業と同等の学力があると認められた者に学士の学位を授与する。

日本では、明治20年から平成3年までの間学位ではなく称号として扱われた。学士の授与権は常に大学が持っていたため、明治・大正期に出版された古い学術書の著者名に例えば「醫學士」(医学士)などと冠されているのを見れば、大学の数が少なかった頃は学士は充分に価値の高い称号だったことが伺える。

短期大学士の学位[編集]

短期大学士は、短期大学を卒業した者に授与される学位である。

日本の称号(学位に準ずるもの及び学位に類するもの)[編集]

法律で定められているものとして「準学士」が、文部科学省告示で定められているものとして「専門士」があり、そのほかに各大学が独自に授与する「名誉博士」などが有名である。以下、学位に準ずる称号及び学位に類する称号を解説する。

名誉博士の称号[編集]

名誉博士の称号は、日本においては、各大学が独自に授与するものである。大学により様々であるが、概ね通称して名誉学位といわれる。多くは授与する大学に関係する人の中で、著名な研究を行ったり、社会的に有名になった人に授与される。学術的評価というよりは社会的な活動なり功績を称えるという顕彰の意味合いが強い。通例、各大学の規則に定めがある。

準学士の称号[編集]

準学士の称号は、高等専門学校を卒業した者に付与される。学校教育法に定めがある。称号表記は称号に括弧書きで専攻名を記す。

例     準学士(工学)
英文表記  Associate Degree of Engineering

高度専門士の称号[編集]

高度専門士の称号は、専修学校の専門課程(専門学校)の内

  • 修業年限が4年以上のもの。
  • 修業年限の期間を通じた体系的な教育課程の編成がされていること。
  • 修了に必要な総授業時数が3,400時間以上であること。

を満たす文部科学大臣が認定し、官報で公示した専修学校の専門課程の課程を卒業した者に授与される。文部科学省の指導により、専門士の表記は、「高度専門士(○専門課程)」と括弧書きで修了した分野の専門課程や学科の名称が付記されることになっている。修業年限は大学学部と同等である。よって、高度専門士の称号を有する者は大学卒業程度、或いは学士の学位とを有する者と同等の学力を有するものとみなされる(但し、高度専門士は学位と異なり国際通用性が無いため、あくまで国内での評価においてのみ大学卒業と同等とみなされる)。高度専門士の称号を持つ者には大学院修士課程・専門職学位課程への受験・入学資格がある。

専門士の称号[編集]

専門士の称号は、専修学校の専門課程(専門学校)の内

  • 修業年限が2年以上のもの。
  • 課程の修了に必要な総時間数が1700時間以上であること。
  • 試験等で成績評価を行い、その評価に基づいて課程修了の認定を行っていること。

を満たす文部科学大臣が認定し、官報で公示した専修学校の専門課程の課程を卒業した者に授与される。「専修学校の専門学校の修了者に対する専門士の称号の付与に関する規程」(平成6年文部省告示第84号)に定めがある。文部科学省の指導により、専門士の表記は、「専門士(○専門課程)」と括弧書きで修了した分野の専門課程や学科の名称が付記されることになっている。最近は民間資格などで○○専門士というものもあるが、専門学校の称号である専門士とは関わりはない。

専門士の例:専門士(工業専門課程)

得業士の称号[編集]

得業士の称号は、旧制の専門学校、特に医学専門学校の卒業生などの称号として、一部の学校で授与していた。現在は廃止。

日本の称号(学術称号ではないもの)[編集]

名誉教授の称号[編集]

名誉教授の称号は学校教育法に規定された称号であって、大学が名誉教授称号授与規定などに基づいて独自に授与するものである。いわゆる学位やその延長線上にある称号とは違い、大学の学長、副学長、学部長などの歴任者や大学教授として長年勤務した者、設置者である法人の理事や監事など、または大学において特に功績ある者に授与される。長年の研究・大学行政・教育への貢献から、名誉教授称号授与式などで称号記あるいは称号辞令の付与をもって称号を授与される。名誉教授の称号は高い権威があると見なされ、叙位叙勲の際にも考慮される指標にもなっている。特に称号に保障はつかないものの、社会的信用は大きいものである。ただし、国公立大学では教授としての勤務年数が名誉教授になるための最大の基準であり、15年間程度(基準は大学により異なる)教授として無事に定年まで勤めることにより(助教授の期間をその1/2年、専任講師を1/3年と換算して加算する大学もある)、特別な業績がなくても容易に授与されるが(教授会審議において、特に勤務様態に問題がない限り否決されることはまずない)、一般人の多くはこうした授与のされ方を知らない。

大学の授与する称号[編集]

大学への寄付を行った篤志家などに対して、名誉校友、推薦校友、学賓、塾員、賛助員、維持員など個別の大学にて定める称号を贈る制度もある。これは学位やその延長線上にある称号とは違い、法的あるいは行政の政令に基づくものではない。大学としての感謝の意を示すものである。

大学病院の授与する称号[編集]

大学附属病院などで功績ある医師に名誉院長などの称号を贈る制度も存在する。法的なものではなく機関の定める規定に基づく。

学会の授与する称号[編集]

個々の学会の定める称号として、その学会で発表された業績或いは学会の中で功績を上げた者に対して名誉会員やフェローなどの称号を贈る制度なども存在する。 法的あるいは公的性格は有さず、学位称号としての性質とは異なる。

市民カレッジなどの称号[編集]

生涯学習の広がりにともない、大学や行政が市民カレッジや市民塾などの講座を主催し、法的な学位に基づかない大学として塾員の称号を授与するケースがある。 これは学術上の法的信用性を付与するものではなく、修了に際しての記念あるいは象徴的な意味合いが強い。

団体などの称号[編集]

各種団体が特定の業種並びに知識を社会に広めるため、大学に模した講座等を主催して、独自の称号を贈るケースも存在する。 法的公的信用を付与するものではないが、その業界の定める特典を受けるという意味合いの性格のものと見てよい。

世界における学位制度[編集]

アメリカ合衆国式の学位制度[編集]

大きくは、doctorate degree(博士学位)、master's degree(修士学位)、bachelor degree(学士学位)、 associate degree(準学位)とFirst-Professional Degree(第一専門職学位)からなる。この体系は、ほかの国々が自国の学位制度を作る際の参考にもしていることが多く、特にdoctorate degree(博士学位)、master's degree(修士学位)、bachelor degree(学士学位)の3つの学位については、多くの国々でこれらと同等の学位が設けられている。現在の日本の学位制度も、おおむねアメリカ合衆国の制度に類似しているといわれる。また,アメリカの学位は文学修士などの様な学問的学位と経営学修士(MBA)の様な職業的学位とに別れ、それぞれにおいて評価や期待は異なる。なお、米国では「学位ビジネス」と呼ばれる、学術研究成果に基づかない、根拠無き称号を売買するビジネスが暗躍しており、学位の社会的な評価の高さと詐欺の実態が浮き彫りとなっている(→認定校制度ディプロマミル)。

グレートブリテンおよび北アイルランド連合王国式の学位制度[編集]

イギリスにおいては、大学などが独自に学位の種類や名称を定めており、また地域によって(特にスコットランドで)教育制度が異なることから、非常に複雑な状況になっている。たとえばケンブリッジ大学オックスフォード大学のMA(Master of Arts)は、学部入学から一定期間を経た学部卒業生に与えられるもので、大学院とは無関係である。またスコットランドの一部の大学では学部卒業生にMaster of Artsを、修士課程修了者にBachelor of Artsを授与している。

しかし一般には、スコットランド以外の地域では学部で3年以上の課程を終えることで学士号(bachelors degree)を得る。これには優等学位(honours degree)と普通学位(ordinary degree)とがあり、修了時の成績が所定の水準を超えた場合に優等学位が授与される。一方スコットランドでは(3年ではなく)4年間の課程を終えることで優等学位が授与される。非公式な習慣として、優等学位の場合に学士号に「(Hons)」と付記する。修士号(masters degree)は学士号取得後1~2年の大学院課程を修了することで、博士号(doctorate)は学士号取得後最低3年の独創的な研究を認められることで授与される。学士号取得後は進路に合わせ、修士または博士の学位を目指すことになる。さらに名誉学位的なHigher Doctorate(上級博士)がある。上級博士の学位は公刊された著書・論文の審査により授与される。

これ以外に、certificateやdiplomaと呼ばれる職業資格や教育資格が数多く存在する。学士号を持たない者が1~2年の課程を修了すると得られる「準学士」的な性格の資格である。一方で、学士号を持つ者を対象とした資格もあり、例えば学士号取得後に1年間の教職専門課程を修了すると、Postgraduate Certificate in Education (PGCE)という教員資格が得られる。

1999年にヨーロッパ圏での高等教育制度の最低限の共通化を図るボローニャ宣言が決議され、2001年にこれに沿う形で枠組みが定められた。概して言えば、Certificate、Bachelor/Foundation、Honours、Master、Doctorの5段階で、このうちMaster以降が大学院に相当する。スコットランドについては別個の枠組みが定められたが、Honours以降は同等となっている。

ドイツ連邦共和国式の学位制度[編集]

ドイツ連邦共和国では、独自の制度があり、ディプロームやマギスターという独自の学位を設けてきた。しかし、国際化の進展とともに独自の学位が不便ともされるようになったため、アメリカ合衆国式の学位制度も創設されるに至っている。しかし音楽大学などの芸術系の大学では「学位」そのものがその後の芸術家としての質の低下を招いてしまうとして、未だに卒業試験のみで「博士」などの学位は与えていなく、外部のコンクール歴などによって「学位」と同等とみなす風潮がある。

フランス共和国式の学位制度[編集]

フランスは独自の学位制度があり、Diplôme Universitaire de Technologie、Diplôme d’Etudes Universitaires Générales、Diplôme d’Etudes Universitaires Scientifiques et Techniques、Licence、Maîtrise、Diplôme d'études supérieures spécialisées、Diplôme d'études approfondies、Magistère、Doctoratなどの学位が存在する。

ロシア連邦式の学位制度[編集]

ロシアの学位制度は現在、2種類のものが混在している。ソ連時代から最近まで学位としては、До́ктор нау́к(博士)、Кандида́т нау́к(準博士)の二つしかなかった。 また、通常の大学(5年制)を卒業した者には、専門家としての資格認定書付きの卒業証書が授与されていた(Дипломи́рованный специали́ст)。一方で、新しい学位制度では、4年制の大学を卒業した者にБакала́вр(学士)、6年制の大学を卒業した者にМаги́стр(修士)の学位が授与されることになった。

Ph.D.[編集]

Ph.D.(ピー・エイチ・ディー)とは、アメリカ合衆国などの英語圏学位の一つである。日本の学位でPH.D.に相当するものとしては、博士の学位が相当するといわれる(詳しくは、Ph.D.を参照のこと)。

歴史[編集]

世界における学位の歴史[編集]

学位の意味とその起源は、14世紀に欧州の大学における教授資格に始まり、学問領域における著作などでの業績、即ち学術的成果に対して授与された栄誉称号として発展を遂げ今日の学位として成立を見た。

世界でもっとも早く大学院が発達したのはアメリカ合衆国であり、そのため、近代的な学位制度は、アメリカ合衆国において最初に発達したと言われている。

日本における学位の歴史[編集]

明治時代 - 昭和前期[編集]

日本では、明治11年に東京大学に学位授与権(学士号)が与えられ、東京大学は、法学士・理学士・文学士・医学士・製薬士の5つを学位と定めた。当時、他には工部大学校札幌農学校が学位を授与していた。明治12年には文部省が学術上功績顕著な科学者を優遇するために学術の発達に寄与するため必要な事業を行うことを目的として、東京学士院の創設がなされた。この東京学士院は学術支援を目的としつつ、研究者の研究支援と顕彰を目的とした研究機関、栄誉機関として日本の学術政策における重要な役割を担うこととなった。

明治19年に帝国大学令(明治19年勅令第3号)が発布され、翌20年に学位令(明治20年勅令第13号)が発布された。明治20年の学位令では、日本で教育を受けた者や一定の研究を行った者に、大博士または博士の学位を授与することになった。学位制度そのものは西欧の制度に由来するが、日本語としての学位呼称については、古く律令体制下における官職名がモデルとなっている。博士も中国王朝の制度を基につくられた大宝律令官制において設置されていた官名で大・中・小博士と三階級あった。博士の官職が置かれた部署としては陰陽寮に陰陽博士、暦博士、天文博士、漏刻博士、典楽寮に医博士、針博士、咒禁博士、按摩博士などの職が置かれており、学士という呼称も皇太子の教育官であった東宮学士に由来する。なお、律令官制下の博士の発音は「はかせ」であるが、学位の正式呼称としての博士は「はくし」と発音する。通称、日常生活の中では通称、俗称として「はかせ」と言うことも多いが、正規の用法ではない。

明治19年、東京大学が帝国大学に改組されて初代総長であった加藤弘之男爵元老院議員に転進し、その謝恩会が開かれたのが発端となり、同大学卒業生により学士会が創設された。現在は社団法人化し学士会館を中心に旧帝国大学出身者の親睦団体となっているが、当時稀少だった学士号がそのまま会の名前になるなど、当時の学士号は非常に重みのあるものであった。

明治20年に発布された学位令では、各博士会の審査を経て、授与権者の文部大臣が授与するものとなった。このため大学が授与できるとされた学士号は称号と位置づけられることとなった。明治20年の学位令発令から平成3年まで、学士号は長い年月、学位ではなく称号として扱われた(ただし、学校教育法の附則(平成3年法律第23号の第2項)により、学校教育法に基づく「学士の称号」は、現行の「学士の学位」とみなすことになっている)。

学位令は明治31年に改正され(明治31年勅令第344号)、学位は、法学博士医学博士薬学博士工学博士文学博士理学博士農学博士林学博士および、獣医学博士の9種とされた。明治19年の学位令が定めていた大博士の学位を授与された者は1人もなく、大博士の学位は、このときに博士の学位に統合されている。また、学位の授与・剥奪の審査を博士会という審議機関に委ねることにした(博士会規則:明治31年勅令第345号)。 当時の学位は学術的能力の指標としての意味もあるが、より栄誉としての意義が強かった。よって封建社会からの位階勲等あるいは爵位や軍人警察の階級などと並んで称される権威あるものであった。いわば当初の学位とは学術上の勲章の様なものであったと言えよう。  

(例)従二位勲一等男爵医学博士北里柴三郎

明治34年、明治法律学校(後の明治大学)で明法学士の称号を授与する制度が始まる。また、明治39年には学術状況を高めるために、東京学士院が帝国学士院に改組された。44年4月には日本の学術成果の向上と業績への顕彰を目的として帝国学士院恩賜賞が創設された。また同年11月には帝国学士院賞も創設され、日本の学界の育成促進を支援し、これを大いに顕彰することとなった。大正9年には、学位令の改正(大正9年勅令第200号)があり、学位授与権が再び大学に移され、博士会制度も廃止された。

一部の旧制専門学校においては、得業士の称号を付与するという制度もあった。

昭和中期 - 平成以降[編集]

第二次世界大戦降伏後、日本全体の制度改革によって学校教育法が制定され、学位令は廃止された。学位制度は、学校教育法(昭和22年法律第26号)とその施行省令である学位規則に基づくものとされた。戦後の学術環境の変化としては昭和22年には帝国学士院は日本学士院に改組されて現在に至っている。この改組によって帝国学士院恩賜賞は日本学士院恩賜賞に、同じく帝国学士院賞は日本学士院賞に改称された。この改組によっても日本学士院が文部省の置く研究機関であると同時に、研究者の間での支援機関、栄誉機関であることには変わりなく、同院の置く日本学士院賞は戦後の学術上の栄誉としては文化勲章文化功労者に次ぐ栄誉として定着した。

昭和28年には、学位規則(昭和28年4月1日文部省令第9号)が公布され、日本の学位において、それまでの博士の学位に加えて修士の学位が創設され、日本の学位は大きく2種類とされた。それ以降、日本の大学院は、修士課程・博士前期課程(標準修業年限2年)、博士後期課程(標準修業年限3年)となり、所定の単位を修得し、学位論文その他の要件を満たす者に対して博士または修士の学位が授与されるようになった。学術環境の面では昭和31年、日本学士院法が制定されることとなり日本学士院は日本学術会議からの分離独立がなされた。

昭和61年には、価値観、生活環境の多様化と高齢化社会の到来に向けて生涯学習の必要性が高まり、大学のほかに学位を授与する機関の創設について検討することが提言された。これにより、平成3年に文部科学省の施設等機関として学位授与機構(現在の独立行政法人大学評価・学位授与機構)が創設され、防衛大学校防衛医科大学校水産大学校海上保安大学校気象大学校職業能力開発総合大学校国立看護大学校の7大学校の卒業者や大学などで一定の学修を行った者に対して、学力の審査を経て、学位が授与されるようになった。また、日本の学術環境にも変化があり日本学士院においてエジンバラ公賞が創設され、研究業績への更なる支援と顕彰がなされることとなった。また、平成3年における学校教育法の改正では、「学士の称号」が「学士の学位」に変更され、日本の学位は、学士の学位が加わって、学士、修士、博士の3種類となった。また平成3年の学校教育法の改正では、短期大学または高等専門学校を卒業した者に準学士の称号が付与されることとなった。

平成6年には、文部省告示により、学校教育法にいう学校(学校教育法第1条の規定に基づく学校、1条学校)ではない専修学校専門課程専門学校)を修了した者にも専門士の称号を授与することとなった。さらに平成15年、高度専門職業人養成の観点から、法曹を養成する法科大学院を中心に、専門職大学院の設置が認められた。当初、専門職大学院は研究者の養成ではなく高度専門職業人育成の観点から、博士の学位でも修士の学位でもない第3の学位を創設しようという動きがあった。

その呼称決定における審議の過程で中国や韓国での修士の学位にあたる「碩士」(せきし)という名称で新たな学位を置くべきかという議論もあったが、最終的には第3の学位たるべき実務者のための学位は、学校教育法に「文部科学大臣が定める学位」として規定された上でそれぞれの分野における事情を踏まえて専門職学位と総称されることとなった。その上で具体的な名称については審議を経て、学位規則において法科大学院修了者には「法務博士(専門職)」、その他の専門職大学院修了者には「○○修士(専門職)」という専門職学位を授与することとなった。とりわけ専門職学位の中では公共政策大学院で授与されるMPPMPMの学位や、ビジネススクール経営学大学院)のMBAなどが代表例である。

専門職学位が第三の学位である以上、博士、修士という表記はあくまで国際標準に照らした通用性を確保するために便宜的に通用しやすい呼称を採用したものであり、研究領域の大学院で授与する博士、修士とは概念を異にする。よって、専門職学位における博士、修士という区分は研究学位の博士・修士の差ほどはない。むしろ国際的には学術的分野においては法務博士(専門職)の学位は学術分野の修士の学位よりも下位に扱われることとなろう。これは専門職学位の期待するところがあくまで特定の分野や職業におけるキャリア形成であったり、スキルの向上を主眼としているからに他ならない。現在では、短期大学の卒業者にも国際的な基準に合わせて学位を授与についても検討が進められ、中央教育審議会の答申を経て、新たに「短期大学士」という学位を創設する法案が国会に提出されて、可決成立した。

関連事項[編集]

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